相続手続きと空き家の管理・処分
1 空き家の相続登記手続き
空き家の主な原因とされているのが、相続によるものです。速やかに相続登記を行い、相続人に名義変更することが必要です。相続登記を放置しておくことによって、所有者不明土地増加にもつながります。相続手続きについてご相談下さい。
2 空き家の相続登記後の対応
相続登記後、空き家をどうするのか、次の対応が考えられます。
① 売却または賃貸を希望する場合
各市町村では、「空き家バンク」の設置など、空き家の活用支援制度を設けて、空き家対策を行っていることがあります。不動産所在地の市町村設置の空き家対策窓口の活用により、空き家の売却、賃貸をすることが考えられます。
*佐野市では空き家バンクを設置しています。
佐野市のウェブページをご参照下さい。
佐野市都市建設部 空き家対策室
http://www.city.sano.lg.jp/kakuka/akiya.html
その他、売買、賃貸について、不動産業者さんへ相談の引き継ぎを致します。
② 空き家のまま管理することを希望する場合
空き家を居住していたときと同じ状態に保つことは、困難な場合があります。特に遠方に居住している場合などは、管理することが難しく、近隣に迷惑をかけてしまう恐れもあります。放置したまま、「*特定空家等」に認定され勧告を受けると、土地の固定資産税が上がることもあり、市町村から空き家の除去等の必要な措置を命じられることもあります。
住宅を空き家のままにしておくことは、家の傷みを早め、資産価値の低下を招く恐れがあります。個人での管理が難しくなった場合、市町村、司法書士などに相談することをお勧め致します。
*特定空家等とは
① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④ 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
相続人が行方不明で容易に戻る見込みがない場合、その相続人(不在者)の財産である家の修繕、売却などの管理や処分をしたい場合、家庭裁判所に申立てをし、不在者財産管理人を選任してもらうことになります。以後、不在者財産管理人が不在者に代わって不在者の財産の管理、処分を行います。遺産分割協議や家の売却などの財産の現状を変更する重要な行為の場合、不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、これらの処分を行います。
この場合、家庭裁判所は、不在者の不利になるような許可は出さない為、申立てた相続人の思う通りの分割協議になるとは限りません。基本的には法定相続分通りの分割になるようです。その他、いったん、申し立てた相続人が不在者の相続分を相続し、不在者が戻ったときに、不在者の請求があれば、法定相続分相当額を不在者に支払う帰来時弁済方式による合意がされる場合もあります。しかしながら、この帰来時弁済方式は、遺産が多額の場合は採用されないようであり、そもそも、裁判官によって、この方式を採用しない場合もあります。この申立ては、予納金の納付など、申立てに伴う出費のことを考えて躊躇される方もいらっしゃいます。
ですが、放置して空き家のままにしておくことは、空き家の荒廃を招いて資産価値を下げ、さらに、傷んだ家の修復など、結果的によけいな出費を招くことにもなりかねません。
2失踪宣告
1の不在者財産管理人の選任以外には失踪宣告が考えられます。住所または居所を去ってから7年以上経過した場合、家庭裁判所に申立て をして失踪宣告をしてもらうと、その行方不明者は死亡したものとみなされる、というものです。以後、失踪者は死亡したものとして、相続手続きを行います。いずれにしろ、放置しておくことは、問題を大きくすることにつながります。一度、ご相談いただければと思います。
*事案によって、司法書士では対応が困難な場合、弁護士に相談を引き継ぎます。
空き家の財産管理
認知症などにより財産管理が行えなくなった方の代わりに財産管理をする人を選任する制度が、法定成年後見制度です。
認知症などにより判断能力が衰えた方が、住宅の修理や増築工事、売却などの契約を締結する場合、成年後見人等を選任しなければ対応することができない場合があります。成年後見人の申立ては、家庭裁判所に申立てをしてから時間がかかります。(1~2か月、準備を含めるとさらに時間がかかります。)いざ、処分が必要になったときに、すぐに対応ができるようにする為にも、あらかじめ選任しておくことをお勧め致します。
2 処分の検討
施設に入所した場合、住宅は空き家になります。木造住宅は朽廃するものであり、特に人が住まない住宅は、朽廃が早く、資産価値が下がります。住宅の流通価値が高いうちに処分をし、現金管理をすることにより、施設入所費、生活費などが必要なときに、速やかに対応ができます。
3 賃貸物件として活用
すぐに売却することがためらわれる場合、賃貸として活用することも考えられます。賃貸物件として活用することが可能な物件であるならば、空き家のままにしておかずに賃貸することにより、現金収入を得るとともに、人が住まないことによる住宅の朽廃を防ぐことができ有益です。
自分が将来認知症になり、財産管理などが行えなくなったときに備えて、財産管理などを行ってくれる任意後見人を選任しておく制度の利用が考えられます。
2 処分の検討
将来施設に入所した場合、住宅は空き家になります。木造住宅は朽廃するものであり、特に人が住まない住宅は、朽廃が早く資産価値が下がります。住宅の流通価値が高いうちに処分をし、現金管理の方法を選択することが考えられます。
また、認知症などにより判断能力が衰える前に処分することにより、施設入所費、生活費が必要な際に、速やかな対応ができます。
近隣の空き家についての問題
空家特措法上、空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める義務があります。市町村は、空家等の管理を促進する為、空家等の所有者に対して、枝の切除、除草などを適切に行うようにアドバイスや、空家等の解体業者、不用品の処分業者などの情報提供をすることができるようになりました。市町村に対し相談し、改善を促す助言や情報提供などをしてもらう方法があります。
2 民法の規定による請求
所有者に対して、民法233条を根拠とする枝の切除と不法行為による損害賠償請求を裁判所に求めることができます。
*司法書士が対応できるのは、簡易裁判所での140万円までの金銭を請求する事案です。
空家特措法の特定空家等に該当するかと思われます。特定空家等に指定された場合、市町村などが、特定空家等の所有者に、助言、指導、勧告、命令を行い、改善が見られない場合、特定空家等の危険の除去の為の代執行を行うことができます。かかった費用は所有者に請求することになります。
市町村では、空家等の所有者の確認を行う為に、戸籍などの調査を行うことができるようになりました。(ただし、所有者の情報を開示してもらえるわけではありません。)
市町村の担当窓口にご相談下さい。
2 民法の規定による請求
所有者に対して、民法の不法行為による損害賠償請求を裁判所に求めることができます。
*司法書士が対応できるのは、簡易裁判所での140万円までの金銭を請求する事案です。